むずむず脚症候群
restless leg syndrome
- レストレスレッグス症候群とは?
- 自分でできる対処方
- 薬による治療薬
- 自分でできる対処法
むずむず脚(レストレスレッグス症候群)とは
次のうち2つ以上当てはまるものがあれば、むずむず脚、すなわち “レストレスレッグス症候群”の可能性があります。
- 夜、寝るとき、脚に不愉快な虫が這うようなつかまれるような異常な感覚が出現して、じっとしていられない。
- 脚の異常な感覚を和らげるために、起きて歩き回ったり、膝を曲げたり、温水や冷水に浸けたり、マッサージなどをしている。
- 脚の異常な感覚は、テレビや映画を観ているときなど一定時間座っているときや、クルマに乗っているとき、会議中などにも出現する
- この異常な感覚に最も悩まされるのは夕方や夜である。朝や昼間は良い。
- ぐっすり眠れなかったり、寝付きが悪かったりすることが頻繁にある
夫、あるいは妻から、寝ている間に脚がビクンと動いていると指摘されたことがある。また、目が覚めたときに、自然に脚や手がビクンと動くときが時々ある。 - しばしば昼間から眠気やだるさを感じる
- 脚の異常感覚の原因は病院では明らかになっていない。
レストレスレッグス症候群は、アメリカの研究によると全人口の3~8%に認められます。そのほとんどは軽症ですが、日常生活に支障を来すほどの重症な例も数万人存在すると考えられています。
特徴
脚をじっとしていられない異常感覚
不愉快な異常感覚が足に、特にふくらはぎに最もよく現われます。この異常感覚は”びりびりする”、”焼ける”、”中で水が動くような”、”虫が這うような”、”痛い”、”掴まれる”などと表現されます。さらにこの異常感覚とともに「からだを動かすように駆り立てられる気持ち」に襲われ脚をじっとしていられなくなります。
運動による症状の緩和
「動かすように駆り立てられる気持ち」を和らげるために通常はその場を歩き回ることになりますが、からだを揺すったり、震わせたり、曲げたり、伸びをしたり、足踏みをしたりする場合もあります。これらの運動は症状を和らげるために自分の意思で行なっているので、自分で運動を止めることができます。したがって、ひとりでに動くわけではありません。
休息・休憩による症状の悪化
レストレスレッグス症候群に最も特徴的なのは、症状が安静・休憩により誘発されることです。それは就寝時でも静かに起きているときでも認められます。多くはリラックスしてから数分後、ときには1時間後に症状が始まります。飛行機や列車の旅、乗客としてのクルマの旅はしばしば耐え難いものとなることがあります。
日内リズム
「異常感覚」と「動かすように駆り立てられる気持ち」はほとんどの場合夕方から夜間に現われます(午後6時から午前4時の間)。これらの症状は通常は昼間には強くありません。たとえ重症な患者さんでも夜明け頃にはいくぶん症状が軽くなります。
さらに、上の4つの特徴に加えて、約80%の患者さんに「周期性四肢運動」という症状が合併します。
周期性四肢運動とは
足や手がビクンと動くけいれんで、通常20-30秒おきに認められ、夜間を通して出たり引っ込んだりする神経症状です。大部分の患者さんはこの繰り返されるけいれんを自覚していませんが、けいれんのため気が付かないうちに半分目が覚めてしまうような場合には病院へ不眠を訴えて来院することになります。85%のレストレスレッグス症候群には周期性四肢運動が合併しますが、周期性四肢運動を有する人(これは高齢者に多いのです)の多くにはレストレスレッグス症候群はありません。
レストレスレッグス症候群は様々な原因により引き起こされる疾患です。
原因
体質
コ-ヒ-、紅茶、チョコレ-トなどのカフェインを含んだ食物を摂るとレストレスレッグス症候群が現われ、カフェインを取り除くと症状が消失します。さらに、妊娠中には15%の妊婦がレストレスレッグス症候群を経験し、症状は分娩後に軽快します。
いくつかの慢性疾患
これまでに慢性貧血、糖尿病、末梢神経障害、アルコ-ル中毒、リウマチ、脊髄小脳変性症においてレストレスレッグス症候群の出現が報告されていますが、なかでも慢性腎不全が最も高頻度にレストレスレッグス症候群を誘発するとされています。慢性腎不全で血液透析を受けている患者さんの中に従来から認められた「イライラ症候群」はレストレスレッグス症候群の重症例と考えられます。
自分でできる対処法
ライフスタイルを変える
レストレッグス症候群に対して最初に行うべき療法は、基礎疾患がある場合にはその治療とライフスタイルの改善です。例えば、カフェイン含む食物接種の制限、睡眠時間をずらす工夫なども挙げられます。
さらに睡眠前に軽い運動を行なったり、ストレッチしたりして筋肉を疲れさせることも効果的です。ここに幾つかのレストレッグス症候群との付き合い方のヒントをご紹介します。
レストレッッグス症候群のことを話してみてください
レストレッグス症候群のことを周囲の人に話すことにより、家族や友人や職場の同僚がどうしてあなたが夜中に廊下を歩いたり、映画館で壁際に立っていたりするのかなどを理解するようになりでしょう。
位置を上げてみたら
仕事や読書が立ったままできるように、机や本棚の位置を背の高さまで上げると、より便利で楽になることがあります。
一日をストレッチで始める
一日の始まりと終わりにストレッチ体操や軽いマッサージを取り入れると症状が緩和されます。
睡眠の日記をつける
レストレッグス症候群に対するあなたの取り組みを助けてくれたりあるいは妨げたりする食事、生活習慣、また薬やその服用方法を記録して下さい。個人個人に則した増悪因子、改善因子を見つけだしライフスタイルを改善してゆくことはすぐに実行できる効果的な対処方法でしょう。
レストレッグス症候群とは戦わないこと
「脚を動かしたくなる気持ち」を無理に抑えこもうとすると、逆に症状は悪化することを何度も経験したことでしょう。それなら寝るのはやめて布団から出て下さい。そして脚のことを忘れられるような何か他のことを見つけて下さい。旅行に行くときなどは、何回も途中で停まることを考慮して余裕を持った計画を立てて下さい。
いつも忙しく
積極的に用事を作って忙しくしてしまうことはレストレッグス症候群を抑えることにもなります。ある人にとってそれはテレビゲームであり、またある人にとってはインターネットをすることであったり、あるいは楽器を演奏すること、絵を描くこと、編み物、プラモデル作りなどでしょう。
レストレッグス症候群の特に強くなる時間帯に楽しめる用事を見つけて下さい。
発想の転換
じっと座って読書することなどできないとおっしゃる方。iPadなどを買って、イヤホンをつけて、動画や小説を楽しんでみてはいかがでしょうか。面白い小説を聴きながらであれば、夜中の散歩や車の旅ももっと楽しいものになります。また癒し系のリラクゼーション音楽は入眠の助けになることでしょう。
薬による治療薬
中等症から重症なレストレスレッグス症候群の場合、基礎疾患の治療とライフスタイルの改善だけではなかなか満足のゆく効果は得られません。したがって、薬物による治療が必要となってきます。
これまでに4つのことなったタイプの薬物が試みられてきました。
それぞれの薬物に特有の効果と限界、副作用があり、薬の選択にあたっては患者さんの症状の出現パターンと重症度を考慮することが重要です。
ドパミン系薬剤
現在レストレスレッグス症候群に対する薬物の治療の第一選択薬といえるものがドパミン系薬剤です。
ドパミンとは脳に存在する神経伝達物質の1つで、いわゆる脳のホルモンであり、脳の正常な動きに必要な物質です。ドパミン系薬剤はこのドパミンの作用を増強する効果があります。ドパミン系薬剤は神経疾患であるパーキンソン病の治療薬として広く使われておりますが、レストレスレッグス症候群は決してパーキンソン病の一症状ではありません。レストレスレッグス症候群の全ての症状、すなわち脚の異常感覚、脚の不髄意運動、睡眠障害、睡眠中の脚痙攣を改善し、服薬開始より2週間から4週間で40%から70%以上の患者さんから明らかな症状の改善を示すとされています。
ドパミン系薬剤の副作用にには第一に嘔気、嘔吐、腹部不快などの消化器症状が挙げられます。特に服用初期に嘔気が多くみられますが、これに対しては制吐剤を併用することにより治療の継続が可能です。また1日1回就寝前の服用により夜間の睡眠が改善される一方で、レストレスレッグス症候群の症状がより早い時刻から現れるようになることがあり、この場合は薬剤の中止、変更が必要になります。その他の副作用として鼻汁、幻覚、便秘、低血圧、頭痛が報告されています。日本では、ドパミン受容体作働薬ビシフロール錠が2010年1月に、ロチゴチンパッチが2012年12月に国から承認を得て、レストレスレッグス症候群治療薬として使用できるようになりました。
ベンゾジアゼビン系薬剤
いわゆる精神安定剤、睡眠薬、抗不安薬と呼ばれるものがこれにあたります。脳の機能を全体的に低下させることにより、多少の脚の異常感覚や不髄意運動が残っていても、患者さんを睡眠へと導くものです。したがって、症状が夜間に集中している患者さんに最も効果があります。副作用は昼間の眠気、けだるさで車の運転には特に注意する必要があります。ベンゾジアゼビン系薬剤を服用した時に飲酒をすると幻覚、錯乱、をきたすことがあります。またこれらの薬は時に習慣性があります。
オピアト化合物
麻酔用の鎮痛剤で最重症のレストレスレッグス症候群の用いられます。副作用にはめまい、眠気、嘔気、嘔吐、便秘、幻覚、頭痛があり、クルマの運転には注意を要します。服用時の飲酒はやめること、また時に習慣性があります。
抗てんかん薬
抗てんかん薬は「脚の異常感覚」と「動かしたくなる気持ち」を軽減させます。特に痛みがあり、症状が昼間に強い患者さんに有効なようです。副作用はめまい、眠気、倦怠感、食欲増進、ふらつき感です。クルマの運転には注意を要します。抗てんかん薬ガパペンチンのプロドラックになるレグナイト嬢が2012年1月にレストレスレッグス症候群治療薬として使用できるようになりました。
久米クリニックにおける治療について
レストレスレッグス症候群に関する基礎疾患を持つ場合はその治療薬行い、同時にライフスタイルの改善を指導します。さらに必要に応じた薬物療法を行います。
レストレスレッグス症候群のせいで眠れないために睡眠薬を服用している患者さんについては、ドパミン系薬剤などによりレストレスレッグを鎮めることで睡眠薬に頼らない自然な眠りを取り戻すことを目指します。