睡眠時無呼吸症候群
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睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に頻繁に呼吸が止まる病気で、急にいびきが止んだかと思うと、また大きなあえぐようないびきが始まり、これを何度も繰り返すものです。
睡眠中、無呼吸が繰り返される度に脳が覚醒するため、夜間の睡眠は浅く不安定になり、その結果、ぐっすり眠れた感じがなく日中に眠気を引き起こすようになります。
この病気は平成15年2月の山陽新幹線運転士の居眠り運転で注目されましたが、自動車運転についても事故のリスクが2-3倍以上に増えることが指摘されています。
2つの種類
閉塞型
胸郭と腹壁の呼吸運動は保たれているが、上気道が閉塞するために口や鼻からの呼吸が停止してしまうタイプです。
中枢型
脳の呼吸中枢機能の低下が原因で呼吸運動自体が停止してしまうものです。
大部分の無呼吸症は閉塞型です。
原因
閉塞型の場合
肥満
顎が小さい 等
下顎の後退などにより上気道が解剖学的に狭いことに加えて、仰向けに寝ることによる重力の影響で大きな扁桃や舌根が沈下したり、上気道を構成する筋肉の緊張低下などの要因が重なり、睡眠中に上気道が閉塞するために起こります。
睡眠中に上気道の狭窄が生じると、はじめに空気の乱流からいびきが発生します。
次いで、吸い込む圧が強まると次第に上気道が閉塞に至り、口と鼻からの呼吸が止まります。
その後、呼吸を再開しようと胸腹部に努力性の運動が現れ、覚醒することで呼吸が再開されます。
この時の覚醒は一過性であり、多くの場合本人には自覚されませんが、睡眠が何度も中断されることで夜間に熟眠できず、昼間に眠気をもよおすことになります。
診断
問診、診察により睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、終夜睡眠ポリグラフ検査を実施して睡眠中の無呼吸の有無、頻度、持続時間、酸素飽和度などを検討して診断します。
携帯型睡眠ポリグラフ検査
自宅で就寝前にセンサーを装着してもらい、睡眠中の呼吸、いびき、心拍数、酸素濃度を記録して睡眠時無呼吸の有無と程度を調べます。
治療
閉塞型睡眠時無呼吸症の治療はCPAPが主流ですが、生活習慣の改善と減量、睡眠衛生の徹底が長期的な治療の基本になります。
CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)
最も安全で確実な治療法です。枕元に置時計のような装置を置いて鼻マスクを装着して横になり、普段通りに寝てもらいます。
装置からは一晩中設定した圧力で空気が送られます。空気は鼻マスクを通して気道に入り、睡眠中に喉の筋肉が緩んで気道が塞がらないよう押し広げ、常に気道を確保するように働きます。
はじめは音や空気が気になったり、マスクがうっとうしかったりしますが、一旦寝付いてしまうとそれほど気にならなくなります。
翌朝の熟睡感を実感したり、頭痛がなくなったり、日中の眠気が改善したり、一度治療の効果を体感するとCPAPに対する抵抗は少なくなるようです。
中等症以上の睡眠時無呼吸症に対するCPAP治療には健康保険が適用され、自己負担額は3割負担の方で月に約5,000円です。
デンタルスプリント
軽症の睡眠時無呼吸症に有効です。口に装着して寝ると仰向けになっても下顎が落ち込まず、睡眠中に喉が塞がることがなくなります。
デンタルスプリントは個人の歯形に合わせて歯科で作成してもらいます。
使い始めてしばらくは違和感があったり顎が痛んだりすることがありますが徐々に慣れてゆきます。
手術
鼻腔・口蓋・舌根部からなる上気道を外科的に再建する治療法で、理論的には閉塞型睡眠時無呼吸症のほとんど全ての症例が手術治療の適応になります。
ただし、実際には患者さんが十分な説明を受けた上で手術を強く希望される場合に行われます。
合併症や突然死のリスクを減らすために手術が必要と考えられるのは、日中の眠気が極めて強くなり、かつ、夜間に低酸素状態に陥っているケースです。