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不眠症

不眠症
insomnia

原因

原因

不眠症は、子供の頃に経験した入学試験やピアノの発表会の前に緊張や興奮でなかなか寝付けないなどの一時的な不眠ではなく、長期間にわたり満足に眠れなくて困っている人達につけられる医学的な病名です。

不眠症はそれ自体が精神的な苦痛となりますが、夜間に満足な睡眠と休息をとることができないと昼間の仕事中や運転中にもうたた寝をするなど社会生活において問題を来たしてきます。

一般に「不眠症には睡眠薬」と直ちに睡眠薬で解決をはかる傾向がありますが、不眠症を来たすのには様々な原因があり、まずそれを明らかにして個々の問題を解消することが重要です。

症状

うつ病や不安障害に伴う不眠症

うつ病や不安障害は多くは環境の変化をきっかけに長期間にわたり憂うつな気分や精神的な不安・緊張が持続する状態です。内科的には、頭痛や胃腸障害を訴え、食欲が低下して体重が減少することがあります。

さらに、多くの場合「早朝覚醒」による不眠が現れます。

夜の寝付きは比較的良いのですが、真夜中に目が覚めてしまい、その後は布団の中でいろいろな考えごとをして再び眠ることができず朝が来てしまいます。

このような不眠症では、うつ病や不安障害が改善すると不眠も軽くなるので専門家によるカウンセリングと抗うつ薬・抗不安薬により日中の憂うつ気分や不安・緊張を和らげるように治療することがポイントです。

また、はじめはうつ病でなくても不眠の状態が長期間続くと憂うつな気分になり昼間の生活にもその影響が出てくることがあります。

不眠とうつ症状が強い場合には、不眠が原因で憂うつになっているのかうつ病が原因で不眠症を来たしているか判別できない場合があります。その時には症状の変化を注意深く観察しながら治療薬を症状に合わせて変えてゆきます。

身体疾患に伴う不眠症

むずむず脚(レストレスレッグス症候群)は夜寝床に入ると足に不愉快な感覚が現れてじっとしていられなくなる疾患で、その結果睡眠が妨げられます。リウマチ、感染症、悪性腫瘍などでは痛みにより睡眠の維持が困難になります。

これらのケースでは不眠の原因となる不愉快な症状や痛みをコントロールすることで自然な眠りを取り戻すことができます。

また、一般に年齢が高くなるほど寝付くのに時間がかかり、夜中に目が覚める回数が増えて、睡眠時間が短くなってきますが、アルツハイマー病などの認知症のある方ではそれがより顕著に現れてきます。

特に、脳血管性認知症のある場合は夜間にせん妄といわれる興奮状態が現れて本人だけでなく家族の生活にも影響を及ぼしてきます。このような時は本人の慣れ親しんだ環境を提供してあげることで興奮が収まり、自然な睡眠につけることがあります。

睡眠時無呼吸症候群は肥満などの影響で上気道が狭くなり睡眠中に上気道が閉塞し口と鼻の呼吸が止まってしまう疾患で、睡眠が何度も中断されるので熟眠できず昼間に眠気を催してきます。

横向きに寝ることで睡眠中の上気道の閉塞を防げる場合もあります。

原発性不眠症

日常生活で誰にでも起きるような出来事やストレスから不眠が始まり、そのような出来事が去った後でも不眠だけが持続する状態です。

夜寝床に入って眠ろうとすると目が冴えてしまって寝つくことができず、昼寝を試みても眠ることができにくくなります。

一方、テレビを観ている時や会議中などには居眠りをしてしまい、旅先や検査室など非日常的な状況下では普段よりよく眠れます。

原発性不眠症のメカニズムは、神経質な人では日常的なストレスが去った後でも不眠への過度のとらわれが残り、それが日中の緊張を高め、また、夜間の眠ろうとする努力が入眠を妨げ、さらに自宅の寝室・寝床・就寝前の身繕いが緊張を高め、これが不眠の条件刺激となり寝床に入ると目が冴えてくる学習過程が形成されて、慢性の不眠に陥ると考えられています。

不眠の結果、昼間の生活にも悪影響がみられ、意欲の低下、注意・集中力の低下、疲労感などを自覚するようになります。

睡眠衛生のポイント

不眠症の治療は、それがうつ病・不安障害や身体障害に伴う場合は、原因となる疾患を治療することで自然な睡眠を取り戻すようにします。原発性不眠症の場合は、はじめによく眠れる条件を整えるよう指導します。

以下によく眠れるようになるライフスタイル改善の4つのポイントを挙げます。

規則正しい睡眠をとりましょう

毎日の起床時刻と就床時刻を一定にすると生体時計のリズムが安定し夜間に自然な眠気が訪れます。日中に適度な運動をすることと昼寝は30分以内に抑えることも重要です。

寝る前にリラックスした状態を作ること

就寝の1~2時間前に入浴し、リラクゼーションの音楽を聴いたり読書をしたりして、日中にたまった緊張や興奮をとりましょう。

就寝前の軽食とミルクも緊張を和らげてくれます。一方、寝る前のアルコールは睡眠に悪影響を及ぼすことがあるので止しましょう。

眠るための過剰な努力はしない

眠るために過剰な努力をすることは、かえって緊張を高めて不眠の原因になります。

眠れないのなら眠くなるまで起きて過ごして下さい。ただし、起床時間は変えないように。

よく眠れるように睡眠環境を整えましょう

寝室を暗く、静かで、快適な温度に保って下さい。パジャマと布団は気持ちの良いものを選び、枕は首の凝らないものを使います。

睡眠薬の効果と副作用

実際の不眠症治療においては、上に挙げたような睡眠衛生の指導だけでは満足のゆく睡眠を取り戻せないことがあり、睡眠薬を使用することになります。

現在の睡眠薬の主流はベンゾジアゼピン系とよばれる薬剤で比較的安全に使用することができます。

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は作用時間により下の表に示すようなグループに分けられ、それぞれ不眠のタイプにより使い分けることができます。

※表は左右にスクロールして確認することができます。

不眠タイプ 睡眠薬タイプ 作用時間 睡眠薬
入眠障害(寝つきが悪い) 超短時間型 2~4時間 ハルシオン
アモバン
ルネスタ
マイスリー
入眠障害(寝つきが悪い)
中途覚醒(夜中に目が覚める)
短時間型 5~10時間 デパス
レンドルミン
中途覚醒(夜中に目が覚める)
早朝覚醒(目覚めが早い)
中間型 10~20時間 ベンザリン
ロヒプノール

ベンゾジアゼピン系睡眠薬使用での注意点

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は比較的安全に使うことができますが長期間服用する場合には気をつけておく点がいくつかあります。

持ち越し効果

薬の量が多いと日中にも眠気が出たり、ふらつきや脱力感が現れたりします。

また、午前中の記憶がないなどの健忘症状が出ることもあります。

作用時間の長い睡眠薬の場合は、1日目から十分な用量を使い続けると次第に効果が蓄積され数日後には過剰となって持ち越し効果が現れることがあります。

特に、お年寄りでは腸からの薬の吸収、肝臓での薬の分解、腎臓からの薬の排泄がいずれも遅くなり、日中への持ち越し効果が出やすくなります。中には痴呆と勘違いされるような症状が現れる場合があるので、漫然と睡眠薬が使われている時には注意する必要があります。

お年寄りに対しては作用時間の短い睡眠薬を半分の量から開始して、持ち越し効果を出さないように適切な量と服薬時刻を決めてゆきます。

アルコールとの相互作用

寝る前にアルコールと睡眠薬を同時に飲むと睡眠薬の効果が強く現れたり作用時間が長引いたりします。

特に、記憶障害や健忘症状が出やすいのでアルコールと睡眠薬の併用は厳禁です。アルコールは寝るまでには酔いが醒めるように嗜んで下さい。

退薬症状

長期間飲んでいた睡眠薬を突然中止すると頭痛やめまい、ふるえやしびれ、不安や焦燥感などの症状が起こることがあります。

また、以前より強い不眠が現れたりします。薬を止める時は徐々に量や回数を減らしていって、最後は不眠のある時だけ頓用で服薬するようにして治療を終えます。

不眠に用いられるその他のクスリ

ドリエル

町の薬局で手軽に購入できる睡眠改善薬がエスエス製薬のドリエルです。

ドリエルには、くしゃみ・鼻水や痒みを抑える作用のある抗ヒスタミン薬が含まれています。

抗ヒスタミン薬は風邪薬やアレルギー性鼻炎・蕁麻疹の治療薬として広く使われていますが、副作用で眠気を催すことがあります。

ドリエルでは抗ヒスタミン薬の眠気を催す作用を睡眠の改善に利用しています。

メラトニン製剤

メラトニンは脳の松果体という部分で作られるホルモンで、夜間に分泌が最高となり日中に最低となります。

メラトニン自体には強い催眠効果はなく、“夜が来たことを体に知らせ、睡眠に適した状態を作る”働きを持つ物質です。メラトニン製剤は、それを服用することで体内のメラトニンの量を増やして寝付きやすくする効果があります。

アメリカでは健康食品としてドラッグストアで市販されていますが、日本では医薬品とみなされるために治験で安全性が証明されない限り発売されることはありません。

国内で使われているメラトニン製剤は旅行者が海外で購入して持ち帰ったものと思われます。

ロゼレム

脳のメラトニン受容体に作用して、睡眠中枢を活性化することで、自然な睡眠を促す医薬品です。

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